債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ〜DES)のメリット |
1.自己資本比率があがる |
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決算書上、借入金が減少し資本金が増加するので「自己資本比率」があがり、銀行の与信審査が有利になります。 |
2.利息負担の軽減 |
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有利子負債の減少にともない利息の支払が軽減される。
(但し、配当負担が生じる) |
3.対外的信用力が高くなる |
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資本金の金額が増えるので取引先からみた会社の信用が格段にアップします。 |
4.相続税対策になる |
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社長借入金がある場合、社長の相続のときに会社に対する貸付金も相続財産となる
遺族は実際返ってこない貸付金のために多額の相続税をしはらうことになかねません。
そこで、会社に対する貸付金を株式に転換することで、より有利な(低い)評価をすることができます。 |
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債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ〜DES)の問題点 |
1.デット・エクイティ・スワップの場合は検査役の調査は不要となりました。 |
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従来は、借入金を資本金に振り替える場合、現物出資者に与える株式総数が全体の1/10超または新株発行数が1/5超の場合か、現物出資価額が500万円を超える場合は、裁判所で選任された検査役による財産価額の調査が義務付けられていましたが、新会社法の施行により検査役の調査は不要となりました。 |
2.株主間で贈与が生じる可能性 |
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借入金を資本金に振り替えることで(現物出資)、株主構成に変化が生じたり、株価が上昇したりすることにより、他の株主に対する株価上昇分(経済的利益)だけ贈与したとみなされる場合があります(相続税法8条)。 |
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(注)現物出資による株式の割り当てを公正な時価でおこなえば「みなし贈与」は回避できます。 |
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(注)会社が増資前、増資後ともに債務超過であれば、増資がどのように行われようとも「みなし贈与」の問題は生じません。 |
3.消費税の取扱い |
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債務者側(DESにより増資する側)において、債務が資本に振り替えられる取引は不課税とりひきとなります。
しかし、債権者側(貸付金が投資有価証券になる側)は消費税法上、DES(デット・エクイティ・スワップ)は「資産の譲渡」に該当し、「有価証券に類するものの譲渡」として「非課税売上」になる(消費税法2@二、消費税法別表第一、法令9@五)
したがって、課税売上割合が下がり、控除仕入税額が減少し、結果として納付税額が増える可能性がある。 |
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(参考)通常の現物出資の場合の課税標準の考え方 |
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土地(時価)100
建物(時価)60
借入金△60
差し引き取得有価証券の時価=100 |
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適格現物出資であっても時価が課税標準となるので注意
(課税売上高=37.5 非課税売上高=62.5) |
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4.資本金が1億円を超えた場合の増税 |
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@ |
交際費の損金不算入 |
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増資後の資本金が1億円を越えた場合には、定額基準がなくなり全額損金不算入となる。 |
A |
中小法人に対する特例が受けられなくなる |
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法人税の軽減税率・・・年所得800万円以下の22% |
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中小企業者の機械等に特別償却 |
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その他中小企業に認められている税務上の恩典がなくなります。詳しくはコチラから |
B |
事業税の外形標準課税の導入 |
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法人事業税額(=所得割額+付加価値割額+資本割額)が増加 |
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5.法人住民税の均等割(きんとうわり)の増加 |
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資本等の金額が1000万円を超えた場合には、最低均等割(きんとうわりが18万円に増える。
資本等の金額が1億円を超えた場合には、最低均等割(きんとうわり)29万円に増える。 |
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(注)減資をする場合も有償減資をしないと「資本等の金額」は減少しない。(無償減資では均等割はさがりませぬ) |
6.海外法人に対するDES(現物出資) |
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会社分割・合併については、商法上、関係法人は内国法人に限られますが、現物出資の場合は内国法人に限らず、海外においても子会社を設立すること等が可能です。税法は、外国法人に現物出資をする場合、非適格となる移転資産及び負債について、「国内にある事業所に属する資産又は負債」と限定しています(法令4の2(7))。したがって、内国法人が海外にある資産を外国法人に現物出資をする場合は、税法上適格となることが可能です。 |
7.債権者による経営参加 |
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債権者は株主にかわるので議決権を有することになる。
但し、債権者が銀行の場合は、債務者の発行済株式総数の5%以下しか保有できない(5%ルール)。 |
8.債権の時価評価 |
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非適格の現物出資(DES)の場合は、出資対象の債権が時価評価され、債務消滅益(債務免除益)課税される。 |
債権の時価とは
- 通常の取引条件の下、第三者に譲渡した場合に通常付される価額
- 法人が有する資産の全部を処分した価額をもって、その法人に対する債権について、担保、保証または優先劣後関係を考慮して弁済するとしたときに、その債権について弁済をすべき金額
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8.税制適格要件 |
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グループ内 |
共同事業 |
要件 |
100%関係 |
50%超100%未満 |
金銭交付要件 |
○(金銭交付がないこと) |
○(金銭交付がないこと) |
○(金銭交付がないこと) |
按分型要件 |
○(株主シェアに応じた株式交付がなされていること) |
○(株主シェアに応じた株式交付がなされていること) |
○(株主シェアに応じた株式交付がなされていること) |
従業員引継ぎ要件 |
なし |
○ |
○ |
主要事業引継ぎ要件 |
なし |
○(事業継続が見込まれること) |
○(事業継続が見込まれること) |
事業関連性 |
なし |
なし |
○ |
規模要件 |
なし |
なし |
○事業規模が概ね1:5の範囲内にあること、又は常務以上の役員を引き継ぐこと |
株式継続保有要件 |
なし |
なし |
○株式の継続保有(株主50人以上の場合は不要) |
その他 |
再編後も当該グループ関係が継続することが見込まれていること |
なし |
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9.適格現物出資と非適格現物出資 |
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適格現物出資 |
非適格現物出資 |
資本等への振替価額 |
簿価 |
時価
平成18年度税制改正により、デット・エクイティ・スワップによって資本に振り替えられる債務については時価評価することになっています。
つまり、債務超過の会社の場合は時価はゼロとみなされ債務の全額が債務免除益のような益金課税される恐れがあります。 |
資本積立金の額 |
簿価純資産額−増加資本金額 |
時価純資産額−増加資本金額 |
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10.期限切れ欠損金の損金算入 |
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非適格DESの場合、資本に振り替えられる債務については時価評価することになっています。
つまり、債務超過の会社の場合は時価はゼロとみなされ債務の全額が債務免除益のような益金課税される恐れがあります。
しかし、法的整理や合理的な私的整理においてDESによる債務消滅益が生じた場合は、「期限切れ欠損金」(繰越控除が可能な青色欠損金以外の欠損金)による課税所得の圧縮が可能である。
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当事務所では、デット・エクイティ・スワップ(DES)を活用した事業承継対策やM&A、企業再建(再生)を多数実施しております。ご遠慮なくお問合せください。 |
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