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相続時精算課税(そうぞくじせいさんかぜい)のまとめ

相続時精算課税制度って?

相続時精算課税制度とは、生前贈与財産を相続財産の前渡しであるととらえ、実際の相続があったときにこの生前贈与財産と実際の相続財産とを合算して相続税を計算するとともに、あらかじめ納付した贈与税を相続税の前払いであるとして相続税納付時に精算する制度です。(税金を二重にはらうことはありません)。まあ、サラリーマンの年末調整みたいなものです。

暦年贈与(れきねんぞうよ)との違い

従来からある110万円まで非課税(基礎控除額)である贈与のことです。毎年確実に相続財産を減らすことができるので、相続開始前3年以内に贈与した財産でなければ相続税の対象となりません。
  相続時精算課税制度 暦年課税制度
通常の贈与(110万贈与)
贈与者 65歳以上の親
(贈与年の1月1日現在)
制限なし
第三者からの贈与もOK
受贈者 20歳以上の子供(代襲相続人を含む)
(外国に居住していてもOK)
(国外財産の贈与もOK)
制限なし


非課税枠 贈与をする人ごとに生涯にわたり2,500万円(特別控除額)。
(両親からだったら合計5000万円まで贈与税がかからない)
(前年度にすでに2500万円を使い切っている場合は、今年の受贈額に20%を掛けた贈与税がかかる)
贈与を受ける人ごとに毎年、年間110万円(基礎控除額)

相続時精算課税を選択した受贈者(子)が、相続時精算課税に係る贈与者以外の者から贈与を受けた財産については、その贈与財産の価額の合計額から暦年課税の基礎控除額110万円を控除し、贈与税の税率を適用し贈与税額を計算します。

贈与者 受贈者 贈与方式 非課税枠
ケース1 長男 相続時精算課税 2500万円
相続時精算課税 2500万円
ケース2 長男 相続時精算課税 2500万円
次男 暦年贈与 110万円
ケース3 長男 相続時精算課税 2500万円
次男 暦年贈与 110万円
ケース4 長男 暦年贈与 110万円
暦年贈与
税金 (受贈額−2,500万円)×20%

※相続時精算課税に係る贈与税額を計算する際には、暦年課税の基礎控除額110万円を控除することはできませんので、贈与を受けた財産が110万円以下であっても贈与税の申告をする必要があります。

(受贈額−110万円)×超過累進税率
計算期間 届出後相続開始まで 暦年(1/1から12/31)
申告 非課税枠内でも、適用を受ける子供は、贈与者(父・母)ごとに贈与を受けた翌年の2/1から3/15までに「相続時精算課税選択届出書」を添付して贈与税の申告書を提出します。

※いったん選択すると選択した年以後贈与者が亡くなった時まで継続して適用され、暦年課税に変更することはできません。

※贈与者が贈与をした年の中途に死亡した場合に、相続時精算課税の適用を受けるときは、「相続時精算課税選択届出書」の提出期限及び提出先が通常の場合とは異なります。
 次の1又は2のいずれか早い日までに、贈与者の死亡に係る相続税の納税地の所轄税務署長に提出します。

  • 1 贈与税の申告書の提出期限(通常は、贈与を受けた年の翌年の3月15日)
  • 2 贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限(通常は、贈与者について相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月を経過する日)

 なお、2の日がこの届出書の提出期限となる場合に、贈与者の死亡に係る相続税の申告書を提出するときには、相続税の申告書にこの届出書を添付しなければなりません。

(注)相続税の申告書を提出する必要がない場合であっても、相続時精算課税の適用を受けるためには、提出期限までにこの届出書を贈与者の死亡に係る相続税の納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

非課税枠内であれば、申告不要(配偶者の特例の場合、申告必要)

非課税枠を超える場合は、贈与を受けた翌年の3/15までに贈与税の申告書を提出。
添付書類

、「相続時精算課税選択届出書」の添付書類

  • 1   受贈者の戸籍の謄本又は抄本その他の書類で、次の内容を証する書類
    • イ  受贈者の氏名、生年月日
    • ロ  受贈者が贈与者の推定相続人であること
  • 2   受贈者の戸籍の附票の写しその他の書類で、受贈者が20歳に達した時以後の住所又は居所を証する書類(受贈者の平成15年1月1日以後の住所又は居所を証する書類でも差し支えありません。)
  • 3   贈与者の住民票の写しその他の書類(贈与者の戸籍の附票の写しなど)で、次の内容を証する書類
    • イ  贈与者の氏名、生年月日
    • ロ  贈与者が65歳に達した時以後の住所又は居所(贈与者の平成15年1月1日以後の住所又は居所を証する書類でも差し支えありません。)
納付 贈与税がある場合は納付し、相続時に精算 贈与の翌年の3/15までに納付


税金 相続財産に贈与財産(贈与時の価額)をプラスして相続税の計算をする。

※結果的に、相続税の基礎控除額以下であれば相続税の申告は必要ありません。
贈与財産は、相続税の計算には関係しない。ただし、相続開始前3年以内に贈与した財産は相続財産にプラスして相続税の計算をする
贈与財産
の価額 
贈与時の価額(時価) 贈与時の価額(時価)
過大贈与
税額
還付
節税効果 ない。2500万円の非課税枠はあるが、すべて相続時に合算されて相続税がかかる。ただし、贈与時の価額で合算されるため、その財産が相続時に値上がりしていれば、間接的に節税になる。 ある。贈与財産は、相続時に計算の対象外になる。よって、その分は、財産を少なくし、結果的に相続税が安くなる。
メリット
  • 一度に大型贈与がしやすい
  • アパートなど収益物件を贈与すれば、贈与後はその果実(賃貸収入)は子供のものとなるため、相続財産の増加を防ぐ効果があり
  • 将来価値の上昇する財産を贈与すれば節税になる
相続財産を確実に減らすことが可能。結果的に相続税が安くなる。
デメリット
  • 相続税を安くすることができない。また、一度この制度を選択すると、その贈与者については、暦年課税制度が使えなくなる。
  • 小規模宅地の評価減の特例等が使えなくなる。
  • 暦年贈与に戻れない
  • 近い将来相続税の大改正があり、暦年贈与の方が有利となる可能性がある。
  • 一度に大型贈与がしにくい
  • 相続発生時3年前の暦年贈与は申告財産に加算する。

相続税の税率・贈与税率

相続税率 贈与税率
基礎控除後 平成22年度 平成23年度(予定) 基礎控除後 平成22年度
税率 控除額 税率 控除額 税率 控除額
1,000万円以下 10% 10% 200万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円 15% 50万円 300万円以下 15% 10万円
5,000万円以下 20% 200万円 20% 200万円 400万円以下 20% 25万円
1億円以下 30% 700万円 30% 700万円 600万円以下 30% 65万円
2億円以下 30% 700万円 40% 1700万円 1000万円以下 40% 125万円
3億円以下 40% 1700万円 45% 2700万円 1000万円超 50% 225万円
6億円以下 50% 4700万円 50% 4200万円
6億円超 50% 4700万円 55% 7200万円

相続時精算課税の留意点

やめたはなしよ

この相続時精算課税制度は一旦選択すると取り消すことができない。従って「暦年贈与」に戻ることができない。

これは相続の放棄や養子縁組の解消など身分の変更があり受贈者が贈与者の推定相続人とならなくなった場合でも同様。

選択した年以降の申告

一度選択した贈与者(父・母)からの贈与については、2500万円の特別控除を使い切ってしまった後は、基礎控除110万円の適用もなく、少額の贈与でも期限内に申告する必要
期限内申告が条件

課税の繰延べ

相続時精算課税制度における2,500万円または3,500万円の特別控除は贈与税の非課税ではない。
贈与時から相続発生時まで納税を繰り延べているに過ぎない。

遺産の生前分割

相続時精算課税制度をつかい、生前に財産を贈与しておけば、それで財産分割が確定し、受贈者に所有権を移転させることができますが、遺留分減殺請求の対象となる。

贈与資産価値の増減による影響

この相続時精算課税制度では、相続税に取り込む贈与財産の価額は贈与時の価額となる。
したがって、時価が下落した場合、相続時の価額よりも高い価額で相続財産に取り込まれてしまう。
(例えば、株式を贈与した後その会社が倒産し、株券が紙切れになったとしても相続財産には贈与時の価額で加算されてしまう。)

小規模宅地の特例

小規模宅地の評価減特例の適用は相続、遺贈によって取得した宅地に限られるため、相続時精算課税制度を利用して贈与した土地については適用できない。
小規模宅地の80%評価減は相続税の計算上インパクトが大きいため不用意に贈与してしまうと取り返しがつかなくなるので、小規模宅地の特例を受けられる宅地の贈与は避けるべき

宅地等

現行

H23年度改正予定

上限面積

減額割合

上限面積

減額割合

被相続人または
被相続人の同一生計親族の
事業用

事業継続
(不動産貸付以外)

400u

80%

400u

80%

非継続

200u

50%

廃止

不動産貸付

特定同族会社事業用宅地

400u

80%

400u

80%

貸付事業用宅地等

200u

50%

その他

200u

50%

廃止

被相続人または
被相続人の同一生計親族の
居住用

居住継続

240u

80%

240u

80%

非継続

200u

50%

廃止

賃貸借物件の贈与

相続時精算課税贈与 そのまま 建物のみ贈与 土地・建物贈与 負担付贈与
贈与時の評価 土地の評価 貸家建付地評価
時価
建物の評価 貸家評価 貸家評価 時価
相続時の評価 土地の評価 貸家建付地評価
小規模宅地の特例
自用地評価
小規模宅地の特例
建物の評価 貸家評価
贈与後の家賃収入の帰属 オーナー 子ども
(相続財産の移転)
子ども
(相続財産の移転)
子ども
(相続財産の移転)
将来土地の値上がりが予想 相続財産増加 相続財産増加 現在評価で固定
※貸家建付地の評価=自用地価額−(自用地価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
※貸家の評価==固定資産評価額×(1−借家権割合×賃貸割合)

相続時精算課税と譲渡の比較

土地原価2000万円
土地時価1億円
譲渡した場合 相続した場合
譲渡人 譲受人 相続人
譲渡価額 譲渡所得 税金(20%) 取得価額 受贈益 税金 評価額 税金(30%)
1000万円
(注1)
2000万円
(注2)
9000万円 4500万円
(注3)
1億円 3000万円
5000万円 3000万円 600万円 5000万円 5000万円 2275万円
1億円 8000万円 1600万円
(注4)
1億円
(注1)個人から個人への譲渡であれば、「みなし贈与課税」は発生せず、実際の譲渡価額を譲渡収入として計算
(注2)譲渡価額が譲渡人の取得原価に満たない場合は、譲受人は譲渡人の取得原価および取得時期を承継する。
(注3)受贈益については贈与税課税
(注4)相続税率が譲渡所得税率を超える場合は、事前に譲渡した方が有利であるが、譲受人は相当の資金を準備する必要がある。また、譲渡人が受け取った譲渡対価も相続時に残っていれば相続財産に算入される。

相続時精算課税の税額計算の流れ



不動産の移転コスト

 (  %)は相続による取得の場合 土地 建物 課税標準 備考
住宅 住宅以外
固定資産取得税 3%
(0%)
3%
(0%)
4%
(0%)
固定資産税評価額 不動産取得日から30日以内に
不動産取得税申告書を提出
登録免許税 1.3%
(0.4%)
2%
(0.4%)
固定資産税評価額